2021年8月10日

雪組「CITY HUNTER」の終盤の展開に納得できなかったので書いた文(ネタバレ有)

 宝塚版「CITY HUNTER」を観劇しまして、終盤の展開(脚本・演出)にど~~~しても納得できなかったモヤモヤを消化したくて書きました。


ちなみに、私自身は子供の頃から「CITY HUNTER」が好きで、原作、アニメ、仏実写版映画はどれも好きだし、「新宿プライベート・アイズ」劇場公開時には新宿の映画館まで観に行ったくらいにはファンです
そして宝塚の方も大好きと言いますか、もうズブズブに沼ってるというか、宝塚版で冴羽獠を演じた彩風咲奈さんの大ファンでございます…ハイ…。

なので今回の舞台化は、楽しみと不安が入り混じりまくったまま初日を迎えました。
実際に見てみると原作からの変更点は色々とあったものの、全体的にはコミカル&アクションシーンも満載で面白く、宝塚版として楽しめるエンタメ作品になっていたと思います。

…でもね!どうしても受け入れられない展開だって!あるんだよ!!人間だもの!!!(みつを)

というわけで、以下は舞台&原作のネタバレてんこ盛りの感想というかダメ出し文ですので、これからご覧になる方やネガティブな感想は見たくないって方はご注意くださいませ。



多分、もう舞台をご覧になった方ならお分かり頂けると思うんですが…納得できないのは、物語の終盤で香が兄の仇と対峙する場面。
舞台版では、香の兄・槇村秀幸を殺害したのはユニオン・テオーペの幹部・ジェネラルということになっているのですが、クライマックスで香がジェネラルに銃を向けるんですね。「アニキの仇!」と言いながら。
まぁ、そこまでは百歩譲っていいんですけど…問題は、香が本当にジェネラルを撃ってしまうこと。
この展開、原作を知ってる人は少なからず「か、解釈違いなんですけどー!!??」と心の中で叫んだんじゃないかと思います。
私はしばらくポカーンとしてしまって、「いやいやそんな、これは後で絶対何かしらのフォローが入るはず………って最後まで入らないんかーい!!」と心の中でちゃぶ台ひっくり返してました。
ええそりゃもう、勢いよく。



※以下、香の銃に関する原作エピソードについてザックリ解説してます。
 これから原作を読もうって方はご注意くださいね!

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舞台冒頭、香が銃を撃つけど全然的に当たらない、という描写が入ります。
これは原作でも有名なエピソードで、香の銃はどれだけ正確に狙っても絶対に的には当たらないんです。何故なら、わざと違う方向に弾が飛んでいくように獠が調整しているから。
そしてこれは、冴羽獠という男の不器用な優しさと愛の深さを示す物凄く重要な設定なのです。

舞台本編でも触れられていましたが、元々獠は香の兄である槇村秀幸(以降槇村)とコンビを組み、シティーハンターとして仕事をしていました。
しかし、槇村はユニオン・テオーペという麻薬密売組織からの勧誘を断ったことで、彼らに殺害されてしまいます。獠はすぐさま槇村殺害を指示したユニオンの幹部を仕留めると香の元へ向かい、兄が殺されたことを告げます。そして香もまた組織から狙われるだろうことを示唆し、槇村が香の誕生日に渡そうとしていた指輪を彼女に渡すと、遠くへ逃げるように諭すのです。しかし香は、気丈にも「あたしがあんたの新しい相棒になる」と宣言。ここから獠と香の物語は始まっていく…というのが原作のざっくりした流れ。

ただ獠は、香とコンビを組んでからずっと、彼女を闇の世界の仕事に関わらせていていいものか悩んでいました。香の幸せを思えば、危険な仕事からは足を洗って表の世界に返してやるのが一番だと頭では分かっている。それでも香とコンビを組んで仕事をしていくうちに、彼女がかけがえのない存在になっていくことにも気づいていた。
香を表の世界に返したい気持ちと、ずっと一緒にいたい気持ちの間で揺れていた獠。
そんな彼が、「香がいつか表の世界に戻る日がきても、人を殺していない綺麗な体でいられるように」という思いで持たせていたのが「最初から照準が狂っていて絶対に当たらない銃」なんですよ。そして獠はこのことを香本人にも、友人知人たちにも長い間ずっと黙っていました。
しかしある時、香はそれを知ってしまい「自分は獠に本当のパートナーとして認められていないのだ」と激しいショックを受けます。思い悩んだ香がすったもんだの無茶をしたことで(詳しくは原作コミックを読んでね!)、獠はようやく本心を打ち明けました。香を自分のそばにおいていていいのか、ずっと悩んでいたことを。
そして、「おまえがずっと俺のもとにいたいと思うなら、パートナーとして受け取って欲しい」と照準を直した銃を差し出すんですね。香も獠が自分を想って悩んでくれていたことを知り、涙を流しながら銃を受け取る…そんな香に獠は「もうお前に無謀なことはさせない。この銃で人を殺させるようなこともさせない!!」とこれからもずっと彼女を守り抜くことを誓う、というまぁ何とも心震えるエピソードなんですよ。
くぅ~~~~っ、獠ちゃんかっこいい!!!!!
(ちなみにこの香の銃は、元々兄の槇村が愛用していた銃っていうのもエモエモのエモポイントね…)


*****************************************************解説ここまで!



まぁそういうわけで、

・香が(舞台版での)兄の仇とはいえ、銃で人を殺してしまったこと
・獠がその場にいながら香を止めなかったこと(原作だったら確実に獠が先にジェネラルを撃って仕留めていると思う)
・槇村(亡霊)が現れて香が銃を撃つアシスト的役割をすること

の全てが解釈違いすぎて本当~~~~にしんどい。
原作も宝塚もどちらも大好きだからこそしんどい、しんどいだよぉぉぉぉ…!!!!!

最初に観た時は、「え、いやいやそんなまさか…香の弾はジェネラルに当たってないでしょ??」って思ったんです。当たったとしても急所は外しているとか、そんな感じだろうと。
そしたら展開的にどう見ても香の銃弾でジェネラル死んじゃってるっていう……。
う、嘘だろ!?嘘って言ってくれよ!!原作の獠ちゃんが約6年(原作で香がパートナーになってから、上述のエピソードが登場するまでの年月のこと)もの間、守り通した香の手を!銃を渡してもなお「汚させはしない」と誓った香の手を!!そんな簡単に汚させちゃうの~!!??
ショックがバカでかすぎる…とても受け入れられない…しかも槇村が銃を撃つ手助けとかありえないでしょ…自分を殺した相手への復讐を香に望むような男じゃないぞ、槇村はー!!??
香もさ、原作でユニオン・テオーペと決着をつけようって時に「兄の敵討ちがしたいのか」と獠に聞かれて、「敵討ちだなんて思ってもなかった…そんなことをしても生き返るわけでもないもの」って答えてるんですよ…香はそういう女でしょおぉぉぉぉ…!!??うわああああああん!!!!!

この場面における獠・香・槇村の描き方は、原作改変というより改悪だと思ってます。
それ以外はなぁ…原作の面白さと宝塚独特の世界観を中々上手く融合させていたと思うだけに、大事なクライマックスでこんな展開にされちゃったのが本当に残念だし悔しいし悲しい…。

ちなみにわたくし、8/7、8/8、8/9とぶっ通しで5公演観たんですが…(笑)
香が銃を構えている時、ミックもまた銃を撃とうと構えているように見えたので、実は香ではなくミックが撃ったのか?とも思いました。
なのでミックの指元もじっとオペラグラスで見ていたんですけど、どうも彼が先に撃ったようには見えなかったし、仮にミックが撃ったのだとしても、香が自分で撃ったと思っているままなら結果は何も変わらないと思います。
ミックが撃ったのであれば、獠がそれに気付かないわけないので「お前は槇村の仇を取ったんだ(=お前がジェネラルを殺した)」なんて言わないでしょう。なのであの台詞は、初めて人を殺してしまった香をフォローするための台詞だったんだろう…とは思う。だとしても獠だったらあんな状態の香りに「仇を取った」なんて言わずに、「もう何も言うな…」と黙って香を抱きしめるんじゃないかなって私は思うんですけどね。はっきりと言葉にしてしまうことで、罪の意識と言うのはより重くなるものなので。
しかもあの流れだと香が明確な殺意を持って人を殺してしまっているわけで本当に救いが無い…撃つにしても、せめて正当防衛的な流れにしてほしかったよぉ…。

で、その後の話の流れとして人を撃ってしまったことにショックを受けている香をミックが慰めるっていうのもさ~モヤモヤする~!!
獠ちゃんが何でフォローしてあげないのさ!?
なのでもしかして、ジェネラル殺害の一連の流れは全て獠が「スイーパーなんかやってる自分と一緒では、彼女は幸せにはなれないから」と香をミックの元へ送り出すための作戦的な何かなのか?とも考えました。獠とミックが交わしていた契約の中に、そういうやり取りが含まれていたのか、とか色々ね、考えましたわよ、ええ。
でも仮にそうだったとしてもさ、ミックは自分と同じ闇のスイーパーじゃん。で、ミックと一緒にいたら香はますます闇の世界の深みにハマるわけで(何しろ手も汚してしまったし)、獠と離れても何も状況は変わらないというかむしろ悪化してるじゃん!?何も意味ないじゃん!!??
というわけでこの案もどうかと思う。

そういえばユニオン・テオーペとの戦いが終わった後、獠がミックに「アドリブがすぎるぞ」という台詞があって、これが何を指していたのかがハッキリ分からないんですけど。
ふと、本当はミックがジェネラルを仕留めると事前に取り決めていたけど(だから獠はあの場面で銃を構えていなかった)、ミックが「自分のパートナーとして迎えるのであれば、香にもスイーパーとしての自覚を持ってほしい。そのためにも自分の手で兄の仇を取って欲しい」と考えて香に撃たせてしまった…とかだったらどうしようって考えちゃって…で、それを咎める獠の台詞が「アドリブがすぎるぞ」だったなら話の流れもつながる?とか思ってしまって。
いやでももしそんな流れだったら、獠はミックを絶対に許さないだろうから、さすがに無いと思うんだけど~思うんだけど~…!!
あ~~~モヤモヤする~~~!!!!!!

そんなモヤモヤが収まらないので、ラストの展開もハッピーエンドとして素直に受け止められなくて…いや、ハッピーエンドなんていらないって香が言ってたけど、そういう意味ではなく(笑)
香は人を撃ってしまったことにショックを受けて、それを慰めてくれたミックにちょっとほだされそうになったっていうのはまぁ、分かんないけど、分かる。でも何で獠の元に戻ることにしたのかとか、その辺がさっぱり描かれないのは何で??
空港で香は獠から「槇村からの預かり物」である指輪を受け取るけど、あれも唐突だったしなぁ…香が自分の元を離れるなら、その前に渡しておかなきゃって思ったのかしら?いやもっと早く渡しておきなさいよ!って話なんだけど。そもそもあれ、「指輪」って単語は多分出てきてないので、原作を知らない人はアレが何なのかも分からない気がする(舞台の冒頭で槇村が「これを香に…!」って掲げ持っているけど、指輪のケースなんて小さいから遠くの席からじゃ見えないし、初見でそのエピソードを最後まで覚えていられる人ってそんなに多くない気がする)
香が獠の元に戻ろうと決意するきっかけになるとしたら、タイミング的にあの指輪だったんだろうなーと思うんですが、指輪に関する説明もエピソードも全然無いから本当にわけが分からないんだよ。
いや、原作ファンからしたら香が獠の元に戻ってくることに理屈はいらないんですけどね(笑)
ただ舞台の内容だけで考えると、ラストで獠と香がまたパートナーを組む流れが腑に落ちなくて…香が人を殺してしまった重荷と今後どう向き合っていくのか、どんな覚悟を持って獠のパートナーを続けていくのか、せめてその辺をちゃんと語らせてほしかったな。
そういう描写も無く、原作にあるホトトギスの花のエピソードだけはあんな風に使って「これにて一件落着!」みたいに終わるのがホント…解せぬ……。原作の美味しいとこだけ都合良く使ってんじゃねーぞ…って、つい本音が出ちまった、いけねぇいけねぇ!!

そもそもなぁ…宝塚版では獠と香がコンビを組んだ経緯も曖昧だし、ミックが何故香に惚れているのかも説明が無いし、獠と香が本当は深い絆で結ばれた相棒であることを示すエピソードも少ない…というかほぼ無い気がする…。
終盤で獠がミック越しに海原を撃つ場面があったけど、互いの信頼関係があるからこそ成り立つああいうコンビネーションは獠と香でこそ描くべきだったと思うよ(中の人たちファンとしては滅茶苦茶美味しかったですけど…)(笑)


というわけで、以下はこんな展開だったら個人的には嬉しかったという妄想です!(笑)

まず、どこかのタイミングで香に「ユニオン・テオーペ…アニキの命を奪った奴らだ」みたいな感じの台詞を言わせて、ユニオン・テオーペとジェネラルに恨みがあることを印象付けしておく(この一言があるだけでも、獠・香・槇村の関係性が整理されて話が分かりやすくなると思う)

獠にパートナー失格と言われて落ち込んでいる香に、ミックが「それなら俺のパートナーになって欲しい」と誘う。香は自分を求めてくれるミックに惹かれかけるが、ミックに「だが俺のパートナーとなるのであれば…香もスイーパーとして生きる覚悟が必要だ」と言われて、人を撃ったことのない香は躊躇する。だが、獠を見返したい気持ちもあって、迷いながらもミックとユニオン・テオーペ襲撃へ向かう。

終盤で香はジェネラルを追い詰めて撃とうとするが、いざ照準を定めると怖くなって中々引き金が引けない。そこへミックが現れ、「香、兄の仇を討つんだ。君自身の手で!」と促す。香が震える手で何とか引き金を引こうとした瞬間…一発の銃声。獠が現れて、ジェネラルにとどめを刺す。香が何か言いかけると、獠は「…俺もこいつには恨みがあってね」とだけ言って事件は終幕。

ユニオン・テオーペは壊滅したものの、自分の手で兄の仇を討てなかったこと、獠に助けられてばかりの自分を不甲斐なく思った香は獠から離れる決心をする。すると槇村の亡霊が現れ、香に「本当にそれでいいのか?」と問いかける。香が「でもあたしは、アニキの仇も討てなくて…」とうつむくと、槇村は「仇なら取ってくれたじゃないか」と話す。香が驚くと、「獠と香。お前たち二人でシティーハンターなんだから」と槇村は微笑む。
それを聞いた香は、獠の元へ帰っていきそのまま舞台のラストシーンに繫がっていく…という流れ。


以上、妄想終わり!こんなん出ましたけど、どうでしょー!?(笑)
うーん…東京公演で多少でも演出を変えてもらえないかな…でも円盤で残るのは大劇場公演の方だろうし、東京で変更があったとしても遅いわけで~しんど~~い!!

と、脚本に納得できなさすぎて長々と書いてしまいましたが、ここに書いたのはあくまで個人の感想ですし、受け止め方は人それぞれだと思います。
主演の彩風さん筆頭に、出演者の皆さんは物凄く真剣に原作やアニメを研究してお芝居を日々深めてらっしゃるので、ご興味のある方は是非劇場で実際にご覧頂けたら嬉しいです。千穐楽(9/13)はライブビューイングやライブ配信もありますので!是非!!よろしく!!!

そして末筆ながら、さきちゃん大劇場トップお披露目本当に本当におめでとうございます!!!!!!!!!
こんな長文を最後まで読んで下さった方、どうもありがとうございました~!!

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