2019年8月1日

雪組「壬生義士伝」キャスト別感想

※作品全体の感想は前記事に書いております。

☆吉村貫一郎@望海風斗

かっこ良かった…!!幕が下りた時、素直にそう思いました。
でも思い返してみると、宝塚のトップスターとは思えないほど衣装は地味だし、気障な仕草も台詞もないし、腰も低けりゃ身分も低い。剣の腕は立つけど、みっともないほどの守銭奴でどう見ても二枚目キャラって感じではない。それでも、彼が何のために必死でお金を稼ごうとしたのかという理由は痛いほど伝わってきたし、一番大切なものを守るために文字通り命がけで戦った生き様には胸を打たれました。何ていうか、反射的に「かっこいい!」とテンションが上がるというよりは、心に沁みるかっこ良さなんだなぁ。
そしてそんな不器用ながらも真っすぐに生きた貫一郎をさぁ…全力で演じて下さるわけですよ、あのだいもん(望海風斗)が…泣くわそんなん、号泣じゃわ!

全体感想の方にも書いたけど、宝塚版「壬生義士伝」は手放しで「最高!」と賞賛できる作品ではありませんでした(※個人の感想です)
それでも涙なくしては観られなかったのは、ひとえにだいもんの熱演があったからこそだと思います。
芝居の緩急の付け方がね、本当に上手いんですよね~!!特に印象的だったのは、油小路事件でどさくさに紛れて谷三十郎を殺したのが斎藤一だと気付く場面。あくまで柔らかな物腰のまま理詰めで斎藤を追い詰める様は切れ味の鋭い刃のようなのに、口止め料を要求する姿は「やっぱり金かい!」と思わず突っ込みたくなる緩さがあるんですよ。落語家の桂枝雀さんは「笑いとは緊張の緩和である」という話をよくされていたそうですが、この場面は正にそんな感じ。
まぁやっていることは強請りなんだけどね!!(笑)
「おもさげながんす」とへりくだりながらしっかり大金を受け取ってる姿が何ともおかしくて可愛かったし、貫一郎をただの卑しい男には見せないだいもんの品の良さと芝居の巧みさはさすがの一言でした。

一方で、殺陣の場面は滅茶苦茶かっこ良くてな~!?
剣術のことはさっぱり分かりませんが、重心を低く刀を構えた姿は見るからに強そうだし、動きは滑らかで無駄がなく、剣筋は速く美しい。加えて敵と対峙した時のあの殺気と気迫ね!!フゥ~!!!
「剣の達人」という設定に負けない見事な殺陣でした。ほんとかっこ良かった~!!

何というか、吉村貫一郎って見る人によってかなり印象が異なる人物だと思うんですよね。
まぁ人は誰しもいくつもの顔を持つ…なんてよく言うし、会社や学校での顔と、家庭での顔が違うなんてのはよくあることだけども。
貫一郎の場合は、貧しい下級武士としての顔、学問に優れた先生としての顔、剣の達人であり人斬りとして恐れられた顔、常に金勘定を忘れない守銭奴としての顔、そして家族を愛する父としての顔、と色々あって。そのそれぞれの顔が、その場その場で全部正直に出てきてしまうんじゃないかな~と。不器用でごまかしが利かない人なんでしょうね。
そんな多面的、かつ癖のある人物をあれだけ魅力的に演じられるだいもんはやっぱり凄いなぁ…。そして南部訛りをしっかり出しつつも活舌の良さは健在という(笑)

でもお芝居上手だからこそ、最期の場面は本当に本当に辛かった;;;;;
ボロボロに傷つきながら、懐から零れ落ちた小銭を数えて、子供たちやしづにあれを買ってあげよう、これを買ってあげようと夢想する姿がもう見てて辛すぎて…さぞかし無念だったろうなぁ。
宝塚のお約束発動のお陰で、ラストシーンではしづと並んで立ってくれたことに何だかホッとしました。

しかしな~とてもとても良いお芝居を見せてもらったのはありがたい限りなのですが、そろそろ紛うことなくハッピーエンド!!を迎えるだいもんを大劇場で見たいよ~~!!!劇団様お願いだよ~!!!!(でも次作もギャングものだから望み薄いよね~!!つっっら!!!)


☆しづ/みよ@真彩希帆

生活は苦しくても夫と家族の愛に恵まれたしづと、裕福ながら想い人には振り向かれないみよ。
辛抱に辛抱を重ねて必死に生きるしづと、商家の娘として明るく快活に生きるみよ。
静と動、影と光のようなどこまでも対照的な二人の女性を、見事に演じ分けていたきいちゃん(真彩希帆)はさすがでした!!
…折角二役を演じるのだから、しづとみよがそっくりという設定をもう少し活かす脚本であってほしかったな…とは思うものの、これはきいちゃんのせいではないからね…!!言っても詮なきことですな…。

でもようやくだいきほが相思相愛の夫婦を演じる姿を見られたのは嬉しかった!
貫一郎がしづに求婚するところなんて本当~に可愛くてさ…あんな初々しいだいきほ、この作品でないと見られないぞ(笑)
できることならもう少しだけでも、幸せな二人の姿を見ていたかったなぁ。しづが心底幸せそうなのってあの場面だけなんだもの…。
貫一郎が命を落とす場面で、銀橋を歩いていたしづの鼻緒が切れるのと貫一郎の絶命をかぶらせるのはベタな演出ながら分かりやすくていいとは思うものの…やっぱりしんどい。

もう一方のみよは明るく元気なきいちゃんが見られて、これはこれで良かったです!
でもお見合いの後のホタルの場面はやっぱり辛いし、結局こっちもしんどいのがな~!!なんともな~!!つらっ!!

だいきほが歌う「石を割って咲く桜」がとにかく素晴らしかったのが救いだわ…。
とはいえ2人でガッツリ歌っているというわけではないので、貴重な歌うまトップコンビの歌声をもっと活かしてほしかったな~というのも正直なところ。

次作はだいきほのデュエットナンバーでガッツリ聞かせてくれると嬉しいな!!
あとできれば最後までどっちも死なない役だともっと嬉しいな!!(笑)


☆大野次郎右衛門@彩風咲奈

しんっっっっっど!!!え、一番しんどい役回りじゃないこのお役!?
と予習で映画版を見た時に思いましたが、舞台で観てもやっぱりしんどかった…さきちゃん(彩風咲奈)が台本を読んだ時点で辛かったってお話しされてたのも滅茶苦茶分かるわ…。
この作品、とにかく「武士として」の建前があるために本音を言えない侍たちが沢山出てくるけれども、その最たるが次郎右衛門くんだと思うんですよ。
家の事情で幼馴染の親友とは身分違いになってしまい、大野家では妾腹の子として肩身の狭い思いをし、それでも出世して大阪蔵屋敷の差配役(今のイメージだと支社長かな?)にまで上り詰めたのに、その立場ゆえに親友に切腹を命じなくてはならなくなるという…エッ辛すぎでは!?
「ファントム」のキャリエールも辛い役どころだったけど、あれはまぁ身から出た錆でもあったからさ…。
それに対して次郎右衛門くんは本人に落ち度があるわけでもないのに、何でこんなことに~!?

と何とも辛いお役を、堂々と演じきったさきちゃんの姿に観劇中何度も泣かされました;;;
さきちゃんのお芝居はとにかく愛に溢れているところが好きなんですけど、その愛が表に出ている時もいいし、表に出ないよう抑えている時もいいんですよ…はぁ。
今回だと、貫一郎の脱藩を引き留めようとする場面は幼馴染への親愛が溢れていてグッと来たし、逆に貫一郎が蔵屋敷に助けを求めてきたのを叱咤する場面では、家臣たちがいる手前厳しくせざるをえない次郎右衛門の辛さが伝わってきてやっぱりグッと来ました。そんで家臣たちを下がらせた途端に声が優しくなるのがまたたまらんし、「二人だけの時はジロエでいい」って何それ!?滅茶苦茶辛いシチュなのに、萌えが過ぎるんですけど…!?
握り飯の辺りももうさ…すんごい辛いんだけど、おにぎり握るさきちゃんには萌えるし、自害した貫一郎を見つけるところもやっぱり辛いけど、だいもんを抱きかかえるさきちゃんには萌えるし…ホントしんどみと萌えの振り幅が大きすぎて大変だったわ…。

あと序盤で道中手形を用意してあげるところもね!いいよね!!
貫一郎に「脱藩など許さんぞ!!」ってあんなに怒っていたのに、自分も切腹する覚悟でこっそり手形を用意してあげて、遠くから彼の無事を祈る姿がめちゃめちゃ泣けました…次郎右衛門~何ていい奴なんだ;;;;

貫一郎はなんだかんださ、惚れた女と結婚できたし自分がやりたいようにやって生きてたけど、次郎右衛門くんはずっと家のため、国のためと我慢を重ねた上に親友を死に追い込む業まで背負ってさ…何とか実のお母さんの前でだけは本音を吐き出せたのを見てホッとしたのも束の間、戦場で撃たれて退場…。

エッやっぱり辛すぎでは!?

さきちゃんの次郎右衛門、とても良かったけどやはりしんどみが過ぎるので、次作こそはだいもんと良好な関係を保ったまま終わって欲しいよ~!!結局今回もさきちゃんの片想いのまま死別しちゃってる感じだし!!
でもなぁ…ギャングだからなぁ…難しいだろうな~…(笑)


☆土方歳三@彩凪翔

かっっっっっこいい…!!!
いや、見目麗しいことは重々承知なれど、中身がまた滅茶苦茶かっこいい土方さんでした…!!
「鬼の副長」なんて二つ名?がついてしまっているせいか、土方歳三ってとにかく仲間に厳しくて怖いって描かれ方をされるイメージがありましたが、翔くんの土方さんは「副長って本来こうあるべきよな…」と納得できる人物像だったなぁと。
組織を統率するにあたって、先頭に立つリーダーの統率力は勿論重要だけど、後方から組織全体を見守るサブリーダーの観察力や気配りも凄く重要だと思うんですよ。
その点、「口では「めんどくせぇ」と言いながらも何事も面倒くさがらずやる人」というこの作品での土方像はとてもしっくりくるものがあったし、翔くんの力みのないお芝居がまた物凄くハマっていてめっちゃかっこ良かったです!!!
なんかこう、俯瞰的に物事を見ているお役を演じている翔くんが好きでして…かっこつけようとしていないくても、自然とにじみでる男前っぷりがいいんだなぁ(「誠の群像」の勝海舟とかとかとか)
貫一郎に金を取られた斎藤一に20両渡してあげるところ、すごく良かったなぁ…あのさり気ない切れ者っぷり。っか~たまらん!!
実に素晴らしい副長でございました!!ありがたや!!


☆斎藤一@朝美絢

最っ高っか…!!!!!!
「壬生義士伝」の斎藤一って、新選組時代はイキりヤンキー感(笑)が凄いと思うんですが、あーさ(朝美絢)は滅茶苦茶ハマってましたね~!!
「ひかりふる路」のサン・ジュストといい、顔は良いけどなんかちょっとやべー奴が本当にハマるんだよな…(褒めてます)

ただ斎藤一の場合、思春期の葛藤を抱えたままでいるというか、何のために生きているのかが分からない鬱屈を抱えているというか。出会ったばかりの貫一郎を「何か気に食わないから」ってだけでいきなり殺そうとするとか、完全にイキりヤンキーだよな…いや、刀で斬りかかる分その辺のヤンキーより何倍も物騒だけど。
そのせいか貫一郎との関係は、学園ドラマでよくある「学校一の問題児と先生」を見ているような感覚になったなぁ。狂犬系ヤンキーが、自分より器もでかければ実力もある先生に突っかかりながらも、段々と認めていく…みたいな。でもヤンキーだから態度はずっと反抗的なままだし、口では「あいつのことは大嫌いだった」とか言っちゃうっていう(笑)
剣の腕は超一流なのに、どこか反抗期の子供のような面のある斎藤一がどちゃくそツボでした!!

鳥羽伏見の戦いの際、自分が食べた握り飯が最後の一個で、貫一郎は食べていないと知った時の激昂シーンも凄く良かったなぁ。
あそこで怒るの理不尽すぎるんだけど(笑)、怒りながらも「お前は盛岡に帰れ」って言うのがね…もうグッときちゃうよね…!!良いお芝居を見せて頂きました…!!
殺陣もかっこ良かったな~!左手での殺陣は大変だったと思うけど、全くそんなことを感じさせないのはさすがですわ…。

あと歌唱力がまた上がったのでは?と今回感じました。お芝居じゃなくてショーの方でだったかもだけど。
あのビジュアルで、芝居心もあって、歌も歌えて…益々パワーアップしているあーさの輝きが見られてとても嬉しかったです!


☆沖田総司@永久輝せあ

あの美しいお顔で笑いながら「斬っちゃいましょうか?」って台詞は反則では!?
これが乙女ゲーだったら一斉に女子が釣れるところだ…(私もうっかり釣られそうだ…)とかそんなことを思わず考えてしまったよね!だって爽やかな笑顔で冷酷な面を見せる美剣士キャラってオタクが大好きなやつだものー!!!
しかもあの狂犬・斎藤一を「ハジメ君」って呼んで親しげな様子まで見せてくれちゃうんだからさ!そりゃー好きになっちゃうよね!!
というわけで(?)、ひとこちゃん(永久輝せあ)の沖田総司もとっても良かったです!!
ひとこちゃんのちょっと陰のある雰囲気がまた良くてな…天才剣士でありながら病魔には勝てなかった沖田の儚げなイメージと重なって、何とも良い味を出していたと思います。
かと思えば、永倉新八(真地佑果)や原田左之助(橘幸)としゃべってる時はお茶目で可愛いという…くっ、何て隙のない沖田総司なんだ!!

しかし本当に、顔面偏差値バリタカな新選組だなぁ…(笑)


☆谷三十郎@奏乃はると

面白すぎてずるい!!!!!!(笑)
剣の腕はさっぱりなのに、逃げ足の速さだけは天下一品。その上自分の不始末を部下に押し付けるという、上司には絶対したくないタイプの人間ですが、にわさん(奏乃はると)が演じると何かもう全然憎めない…!!www
油小路事件では殺される場面だというのに、味噌樽の蓋で応戦したり、敵には雑魚呼ばわりされてきょとんとしたりw
とてもコミカルなキャラクターだけど、変な笑いに走らないにわさんのお芝居がとても良かったです。
いや~でも身近にこういう人がいたら滅茶苦茶大変だろうな~…。


☆ひさ@梨花ますみ

なんかまだ組長って感じがしてならないのですが…(笑)
そんな感慨はともかく、とても良いお芝居で舞台を引き締めて下さったなぁと思います。
さきちゃん演じる次郎右衛門くんが何しろ辛い立場だったからさ、みとさん(梨花ますみ)が実の母として次郎右衛門くんを叱咤激励したり、慰めてあげたりする姿にホッとしました。
人前で泣けない次郎右衛門くんに「ここで泣いていけ!」と言うところは私の方が泣けましたわ…;;;;

さきちゃん主演の「ハリウッド・ゴシップ」にもご出演予定とのことなので、こちらでも素敵なお芝居が観られると嬉しいなぁ。


と、大分長くなってしまったので他に印象的だった方を箇条書きにて。

・あやな(綾凰華)の大野千秋は回想シーンが良かったな~!大野家は父も子も辛い役回りが多いけども、あやなの素直な演技が千秋の優しい性格をよく表現していたと思います。できれば嘉一郎とのエピソードをもっと見たかった。

・少女時代のみつを演じた彩みちるちゃんがとっても可愛い!!そして子供の演技がとっても上手!!小さい女の子に見えるよう、色々工夫しているのが感じられて凄く良かったです!!

・久城あす君の存在感が凄い(笑)話の展開上、よく分からないまま切腹させられてしまうという気の毒な役なんだけど、あの場面のあす君はとっても輝いていたよ…!ざんばら髪だったけれども!!

・りーしゃさん(透真かずき)の佐助も凄く良かった…下男という立場上、勝手なことはできないけど貫一郎のことも次郎右衛門のこともよく知っているからこそにじみ出てくる温かさがあって。佐助が次郎右衛門の側にいてくれて良かったなぁとしみじみ思いました。

他にも思いだしたら追記するかもしれません~。
とりあえず一旦ここまでで!

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