2019年5月30日

月組「夢現無双」感想

※以前ぷらいべったーに掲載した文章の再掲です
※「『夢現無双』大好き!!超感動した!!」って方は趣味・嗜好・感性が私と合わないと思いますので読まない方が良いかと存じます。あくまで個人の感想です。


演目が発表になった時、月組に詳しくない私でも「あ~分かる~」と思ったたまきち(珠城りょう)の宮本武蔵。
たまきちが武蔵ならみやちゃん(美弥るりか)が佐々木小次郎だろうなと想像がつく。二人のイメージに合うし、原作もあるし、サイトー先生なら上手くまとめて良い作品になるのでは~…と思ってたんですが。

幕が開いてからヤベェ噂しか聞こえてこない…。

え~何で~!?どうしちゃったサイトー先生!?
いやだって「桜花に舞え」は良かったしさ…「エル・アルコン」もめっちゃ好きなんですけど…。
まぁでも百聞は一見に如かずだしね!と思いつつも、期待値を限りなく低く(むしろマイナスに)して臨んだ観劇だったんですが。

こいつはヤベェ…(納得)

も~本当にヤマなし、オチなしでついでにイミもないかもしれない。
最後まで見ても何が描きたいお話だったのかが私にはよう分からんかった!!この作品のテーマとは!?

以前、何かのインタビューで小柳奈穂子先生が「長い原作モノを舞台化する時は、まず話を1行に要約する」てお話をされてたんですね。たとえば「はいからさんが通る」なら「女性が自立する話」とかそんな感じで、まず話の軸になる部分を決める。そこにエピソードを足していくことで、筋が散漫になってしまうのを防ぐ…というとても分かりやすくて、「だから小柳先生作品は安心して見られるんだな~」と納得のお話でした。

「夢現無双」はこの話の軸がよく分からなかった。
武蔵の成長物語ではあるんだけど、彼が何のために強くなりたいのか、強くなってどうしたいのかが見えてこない。
父や母との関係が「強くなりたい」という思いの根底にあるのはなんとな~く分かるけど、なんとな~くじゃダメじゃんこの部分!?成長物語において行動原理ってすっごく大事だよね!?
「かつて父を倒した天才剣士・佐々木小次郎との対決と、武蔵が剣の道に求めたもの」に焦点を合わせて、スタンダードに巌流島の決闘をクライマックスにすればよかったのになぁ…何でそうしなかったんだろ??
そこを強調すればみやちゃんのあのとんでもない麗しさやカッコよさも活きただろうし、出てくるたびに通行人Aみたいな印象にもならなかっただろうなと(いやあんなに美しい通行人Aがこの世に存在してたまるかって感じだけど)
そしてライバルがカッコ良ければ主人公との対比も活きてくるわけで、たまきち武蔵ももっと地に足のついたキャラになったのでは。折角二人に似合いそうなキャラを持ってきたのに、何とも勿体なさすぎる…。
これが他の舞台だったらまた話は別かもしれないけど、宝塚だもん。
宮本武蔵の薄く広く満遍なくなダイジェスト人生物語より、話の前後をぶったぎってでもトップと二番手の宿命のライバル関係とか、そこに至るまでの過程、そしてドラマティックな結末が描かれた物語の方が私は数万倍楽しい。
組子のために役を沢山用意してくれるのは良いことだと思うんですけど…ちょっと人物もエピソードも散らかりすぎだった印象。
何となくですが、サイトー先生は原作が好きすぎたのかなと思いました。「あの場面も良い!この場面も入れたい!!」と好きな場面を詰め込みすぎた結果、テーマがぼんやりしちゃったのかなと。

あ、あと武蔵の心の声うるさすぎ問題!!(笑)
小次郎と初めてすれ違った時に「只者ではない…」と心の声アナウンスが入るのは分かるよ。
ただお通が武蔵への想いを告げる場面での心の声アナウンスいらなくない!?2階席後方から見たら、心の声ではなくて実際の台詞と勘違いしちゃうんじゃ…?と心配になった。口元動いてるかどうかなんて遠くからじゃ分かりにくいし。
段々「あーもーめんどくせぇ、お通に全部話しちまえYO!!」ってなったよ私…強くなりたい目的もフワフワしてる武蔵なんだから、もうお通とくっついてもいいんじゃないの~!?(投げやり)
お通の気持ちには応えられないものの、実は武蔵もお通を想っている…というのであれば、お通が捌けてから彼女が去った方向に向かって「お前と一緒に、生きてもいいか」とつぶやく武蔵…とかの方が私は好きだな。
そういえば「エル・アルコン」の時も主人公の心の声がアナウンスで入って「宝塚ってこういう演出もするんだ~斬新~」なんて当時思った記憶がありますが、単にサイトー先生が心の声演出好きなのかな…漫画だとウニフラに囲まれてそうな台詞。
にしたって今回は多すぎ。あの心の声でお芝居が更に冗長なものになってしまっている印象を受けました。

でもこんなアレな脚本・演出でも全力でぶつかってお芝居する宝塚の生徒さん方は本当に偉いしかっこいいな…月組さんめっちゃ頑張ってた。めっっっちゃ頑張ってた。
そして私が観劇した回(5/23(木)ソワレ)はれいこちゃん(月城かなと)が怪我のため休演。その代役をおだちん(風間柚乃)と蘭世惠翔くんが頑張って務めていました。5/21(火)マチネから代役公演になったから5回目だったのかな?あれだけタイトなスケジュールで、いきなりの代役とは思えないほど立派に演じ切っていたお二人は本当に素晴らしかったです。
おだちんなんてエリザに続いての代役だもんな…新公主演も務めて、更に代役まできちんとこなしてって凄すぎない!?
けどさすがに無理がすぎると思うのでホント、お体に気を付けて欲しいなと思います…。

以下キャスト別ざっくり感想。


☆宮本武蔵@珠城りょう

絶対ハマるだろうと思っていただけに…うーん残念。
脚本が悪いのは勿論あるにしても、シリアスな場面で台詞が棒読みに聞こえてしまうのが…暴れん坊武蔵を沢庵さんが諭す場面の「オレハツヨイィ~!!(棒)」「オレヲコロセェ~!!(棒)」にびっくり。
いや、ちょっと棒すぎません!?アレェ~!!??
歌もそうだけど、たまきちの男役声って抑揚をつけにくいのかな…?だから叫ぶと全部棒っぽく聞こえてしまうのかもしれない。
前半は演技が棒っぽくなったり、吉岡道場に返り討ちにされる場面もあっけなすぎて「このお芝居、本当に大丈夫か…」とハラハラしましたが、弟子ができた辺りからだいぶ落ち着いた印象。後半は安心して観られました。
ただ走り方がなんか…常に小走りみたいだったのは何でだろ??元々そういう走り方ならいいんだけど、私が観た回はたまきちも調子が悪かったそうなので…千秋楽まで無事に乗り切って欲しい。


☆佐々木小次郎@美弥るりか

「デンジャラスビューティ☆KOJIROU」とかそんな感じの小次郎みやちゃん主演のスピンオフが観たいんですけど!?(でも退団されちゃうんですよね…嗚呼…)
というくらい美しく、麗しく、そして強くてかっこいい佐々木小次郎でした。
まぁ脚本のせいで出てくるたびに「通りすがりの超かっこいい人」みたいでしたけどね!?いやでも水も滴るいい男とは小次郎みやちゃんのためにあるような言葉だなと思いました。も~あらゆる所作の色気が凄い。道を歩くだけですれ違う女(と多分男も)のハートを盗みまくってるでしょうね、これは…あまりにもギルティ。
最後の武蔵との決闘もかっこ良かったなぁ…あの長い刀の扱いは大変そうでしたが(特に鞘に戻す時)(そりゃ鞘を投げ捨てたくもなるわと思った)(そういうことじゃない)
ただやっぱり退団公演がこれっていうのは勿体ないなぁという気持ち。
「惜しまれつつ退団」というのがタカラジェンヌとして美しい引き際だとは聞くけれど、これはちょっと…惜しみ方が違ってしまう気がする~!!勿体ない~!!


☆お通@美園さくら

月組観劇歴が激浅いため、意識して観るのは初めてだったのですが…普通に良いじゃん??(上からですみません)
いや、カフェブレイクにエリザの新公ヒロインとして出演されてたのを見た時に「うわ、話し方が苦手だな~この子…」と思ってちょっと引いちゃってたんですよね。
そしたらお芝居も歌も良いじゃん~!?ストーカー気味だけど、武蔵を一途に慕って追いかけるヒロインがハマっていてとても良かったです。一途ヒロインって下手するとウザ女に見えてしまうけど、私は最後まで「お通、健気で可愛いなぁ」と思いながら見守れました。
トップ娘役ってだけでも大変なのに、スーパーグレイト娘役ちゃぴ(愛希れいか)の後任ってことで余計プレッシャーが大きいとは思うけどこれからも頑張って欲しい…!!


☆又八@風間柚乃

れいこちゃんの又八を観られていないので何とも言えないのですが、おだちんの又八すっごく良かったと思います!!愛すべきヘタレ!!ダメなところが可愛い!!
又八は3枚目な役どころだけど、一番人間らしい弱さも表れているので共感しやすいキャラクターという印象。だからこそ、強すぎても弱すぎてもダメな、バランスが難しい役でもあるかなと。
何も知らないで観に行ったら代役だなんて全然気づかなかったんじゃないかなぁ…それくらい堂々と、かつ自然に演じている印象を受けました。
なんかもうビジュアルも芝居も歌もこんだけ出来上がっててまだ新公学年って信じられないや…良い意味で学年詐欺って言われてしまうのがよく分かる。将来がとても楽しみなジェンヌさんだなぁ!今後ますますのご活躍をお祈りいたします!!


☆吉野太夫@海乃美月

何度も言ってしまうけど脚本が何しろアレなので、吉野太夫の役どころもちょっと掴みづらかった…けど、ヒロインのお通が自分の気持ちに正直に突き進む女性なのに対し、吉野太夫は中々本心を見せず穏やかに、そして儚げに微笑んでいる女性という印象。太陽と月のような対比が良かったし、何よりうみちゃん(海乃美月)がとっても綺麗でした!!
武蔵が吉岡一門との決闘をする場面で琵琶をかきならしてるのもかっこ良かったよ~!!

あと輝月ゆうまさんと白雪さち花さんの濃さは凄かったな…「濃い!!存在感すごい!!」って感想しか出てこなくて恐縮なんですが。
そんなこんなで印象に残った方々のざっくり感想でした。

あ!それとおだちんの役どころ(宍戸梅軒)に代役で入って頑張ってた蘭世くんですが、さすがに鎖鎌の扱いは大変そうだった…(笑)こればっかりはホント、一朝一夕にできるものではないだろうと思うので怪我のないように頑張って欲しいです。
そしてれいこちゃんとうみちゃんのお怪我が一日も早く良くなることを心よりお祈りしています。
月組頑張れ…!!

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